「一生懸命つくった野菜や果物を高値で売りたいけど、なかなか希望の値段で売れない。」
多くの農家さんが抱える悩みだと思います。
JAに出荷しても安いし、直売所だけでは販売量に限界が、、、
そんなケースが多いのではないでしょうか。
農産物を高く売るなんて、普通の農家には無理なのか?
・・・いえ、そんなことは決してありません。
もちろん、相場を無視したような高値は難しいですが、やり方しだいで農産物を適正な価格で販売することは可能です。
そのために重要なのは、ある方針にそって農業をすること、、、
すなわち『農産物に付加価値を付ける』ことです。
今回は、農産物の付加価値というテーマについて、いっしょに考えてみましょう。
付加価値とは
みなさんは「付加価値」という言葉を聞いたことはありますか?
簡単に説明すると「商品やサービスに新しく加えられた独自の価値」という意味です。
例えば、自動車を思い浮かべてください。
何十年も前の車と現在の車とでは、かなり性能が違いますよね。
エアコンやオーディオが装備されたり、ETCやカーナビが付いたり、燃費が良くなったり、どんどん新しい機能(=付加価値)が加わっています。
新しい機能の付いた新車が発表されれば、思わず欲しくなってしまいますよね。
このように、製造業やサービス業など、世の中の会社は、「商品に付加価値を付ける」ことを常に考えて経営を行っています。
そうしないとライバル会社に負けて、商品が売れなくなってしまうからです。
農業においても他の業種と同じように「付加価値を付ける」ということが重要です。
付加価値を付けることで、他の農産物との差別化につながり、高い値段でも売れるようになるからです。
農産物の付加価値とは
「農産物に付加価値を付ける」ことの重要性については理解してもらえたと思います。
では、農産物の付加価値にはどんなものがあるでしょう?
簡単な具体例を挙げてみます。
1.無農薬・減農薬で栽培
有機栽培は健康にいいイメージがありますよね。
食べ物が安心・安全だという付加価値であり、農薬を使った農産物との差別化ができます。
2.食味が良い
味が良いというのも、立派な付加価値です。
味が良ければ値段が高くても買ってくれる人がいますし、高級レストランの食材や贈答用としての用途もあります。
3.新鮮である
新鮮な野菜やフルーツは、みずみずしくて美味しいうえ、保存期間も長く保存できます。
ネットショップなどで産地直送している採れたての農産物には、「新鮮」という付加価値があるのです。
以上、パッと思いつく付加価値の例を挙げてみました。
当たり前のものばかりじゃないかと思いましたか?
もちろんここで紹介したもの以外でも、農産物の付加価値の例はたくさんあります。
農産物の付加価値は「品質」だけじゃない
先ほど紹介した付加価値は、味や新鮮さといった農産物の品質に関係したものでしたね。
実は、農産物の付加価値は、品質以外の面でも付け加えることができます。
いったいどういうことでしょうか?
具体的に説明したほうが分かりやすいので、いくつか例を挙げてみます。
1.安定した量を収穫できる
飲食店や食品メーカーは材料が安定して供給されないと困ります。
天候などに左右されず常に一定量を出荷できるならば、それは付加価値になります。
2.作り手への信頼
作っている人が、まじめで責任感があり信用できるというのも、付加価値の一つです。
スーパーに行くと、農家さんの顔写真が貼られた野菜のパッケージを見かけますよね。
(購入者にとっては、誰が作ったか分かるのは安心に繋がります。)
3.農産物についての知識
「正しい保存方法」、「含まれる栄養価」、「おいしい調理法」などを購入者に教えてあげれば、より美味しく食べることができますね。
農産物といっしょに知識を提供することも、お客様にとっては付加価値となります。
4.ストーリー
「農家さんがどんな思いを込めて栽培したのか」など、農産物にストーリーを添えることでも、付加価値が生まれます。
ストーリーがあるだけで、他の農産物とは違ってみえるものです。
いま紹介したように、農産物を売るときの工夫しだいで、まったく新しい付加価値を付けることが可能です。
購入者にとってどんな付加価値があるか、いろいろ考えてみましょう。
消費者によって付加価値は違う
価値観って、人によって違いますよね。
だから当然、付加価値も購入する人によって変わってきます。
もう一度、自動車の例で説明すると、最近では自動運転の車なんかが出始めましたね。
目的地まで楽にドライブできるので、とても素晴らしい機能(=付加価値)と言えます。
ところが、車の運転そのものが好きな人にとってはどうでしょうか?
そういう人にとっては、マニュアル操作でキビキビ走る車の方が価値があり、逆に、自動運転はマイナスの価値でしかありません。
このように付加価値は、客層やターゲットによって異なるのです。
<実例> 酸っぱくても売れるミカン
今度は農産物である「ミカン」の例で説明します。
ミカンの付加価値を思い浮かべてみてください。
普通は「甘いミカン」、「新鮮なミカン」、「皮の薄いミカン」などが思い浮かびますよね。
逆に「酸っぱい」というのはマイナスの価値に思えます。
でも、消費者の中にはそれを好む人がいて、「甘酸っぱい」は立派な付加価値になるのです。
ちょうど実例があるので少し紹介します。
下記のホームページは、実際に「甘酸っぱいミカン」を販売しているネットショップです。
実は、このネットショップは私たち農ログが制作したもので、香川県の個人農家さんといっしょに運営させて頂いてます。
「本当に酸っぱいミカンが売れるの?」と思われるでしょうが、毎年、ファンの方にリピート購入してもらっています。
なかには年に3~4回リピート購入されるお客様もいるほど!
これは一般に売られているミカンとしっかり差別化できているからなんです。
いま紹介したように、一見マイナスのようなことでも付加価値になりえます。
新しい付加価値をみつけるのに悩んでいる農家さんは、一度、固定観念をなくして検討してみてはどうでしょうか?
付加価値を伝えることも大切
いくら付加価値を付けても、相手に伝わらなければ意味がありません。
特に農産物の場合は、見た目だけで違いを知ることが難しいです。
あなたが一生懸命こだわって栽培した野菜・フルーツを、そのまま売り場の棚に並べて、お客様に買ってもらえるでしょうか?
おそらく答えは”NO”です。
他の野菜、果物と何が違うのか分からず、値段が高いだけだと思われてしまうでしょう。
これでは消費者もお財布からお金を出してはくれません。
付加価値の付いた農産物を高値で売るためには、
- 売り場にポップを置いて他との違いを伝える
- 付加価値が伝わりやすいようにパッケージの工夫をする
- 農家さんのホームページで情報発信していく
このような事が、とても重要になってきます。
すぐにこれら全部やるのは難しいかもしれませんが、他よりも高い値段で農産物を販売しようとすれば、それなりの時間や労力は必要です。
少しずつでも進めていき、あなたの農産物の付加価値をしっかりアピールして、適正な販売価格を狙いましょう!
まとめ
多くの農家さんから、「野菜がぜんぜん高値で売れない。お客さんは農家の苦労がまったく分かっていない。」という話を伺います。
確かにその気持ちはよく分かります。
でも、ほんの少し視点を変えてみてください。
あなたが汗水流して農作業をするのは、きっとこだわりを持って栽培しているから。
「農薬を減らして安全な野菜、果物を食べてもらいたい」
「おいしさに自信のあるものをつくりたい」
そういった気持ちで農業されている方の農産物は、すでに付加価値が付いているはずです。
あとは、それを消費者にうまく伝えるだけ。
これからは「付加価値を付けて売る」という考え方をあなたの農業経営に取り入れてみてはどうでしょうか。
補足:狙うべき販売価格について
「付加価値を付けて高値での販売を目指す」という主旨の記事だったので、今回は書いていませんが、いくら付加価値があっても極端な高値の販売は難しいです。
車の例でいえば、最新装備がふんだんに盛り込まれた車であっても、2000万円もするような特別な車は一般人は買えませんし、販売量も限られてしまいます。
極少量だけの販売でいい、というなら別ですが、多くの農家さんはある程度の販売量も必要だと思います。
自分が目標とする販売量、商品の魅力などを考慮し、バランスの取れた価格を目指しましょう。