アメリカではトランプ大統領が就任し、TPP離脱が決定しました。
一安心だという農業関係者の方もいるかもしれません。
しかし、これから説明しますが、決して日本の農業にとって安心できるような状況ではないと、農ログは考えています。
TPPは今後どうなるのでしょうか?
もしTPPが中止になれば、日本の農業は安心なのでしょうか?
今回の記事では、これらの疑問について、農ログの考えを説明します。
前回の記事「TPPって何?農業に与える影響と農家さんが取るべき対策」では、TPPの内容と、農業への影響について解説しました。
TPP自体について知りたい人は、まずそちらの記事を読んでみて下さい。
今回の記事は、TPPのこれからについて、農ログの思う、不安点を中心に説明します。
しかし、農家さんを必要以上に不安にさせるつもりはありません。このような可能性もあるという話ですので、可能性の一つと思って読んでみて下さい。
1.TPPは今後どうなるのか
アメリカがTPP交渉から離脱
ご存知だと思いますが、アメリカではトランプ大統領が就任し、正式にTPPからの離脱を決定しました。
アメリカはTPPには参加しません!という事ですね。
ですから現時点(2017年2月)では、TPPが始まる見込みはない、と言えます。
(TPPは、アメリカが参加しないことには始められません。)
しかし、実は完全にTPPが中止になったわけではありません。
今後の流れによっては、まだTPPが始まる可能性もあるのです。
それではTPPは今後どうなるのか?これは下記の3つのパターンが考えられます。
- アメリカが復帰して、TPPが始まる
- アメリカ以外の国だけでTPPを始める
- TPPが中止になる
1.アメリカが復帰して、TPPが始まる
可能性としては低いですが、今からでもアメリカが方針を変えてTPPに参加すれば、TPPは開始されます。
上にも少し書きましたが、TPP自体は無くなっていません。
現在は、TPPに加盟する国が、それぞれの国内で手続きをしている所なのです。
ですから、トランプ大統領がこれから先TPP離脱を考え直し、アメリカがTPPに参加することを決めれば、(他の国がTPPを離脱しない限り)TPPは始まります。
とはいえ、トランプ大統領が考え方を変える事はあまりなさそうなので、このパターンとなる可能性は低いと思います。
2.アメリカ以外の国だけでTPPを始める
アメリカがTPPからの離脱を決定した後、TPPの参加各国から、アメリカ抜きでTPPを始めようという意見が出されています(オーストラリアやニュージーランドなど)。
現在のTPPのルールでは、アメリカが参加しないとTPPを開始する事はできないようになっています。
しかしこのルールを変更し、アメリカ以外の国でTPPを始めようという事です。
日本も含め、どれだけの国がこの案に賛成するかは分かりませんが、仮に多くの国が賛成すれば、アメリカ抜きでTPPを始める可能性はあります。
3.TPPが中止になる
TPPは2018年2月3日までに、各加盟国が参加を決めれば始まることになっています。
(詳細は農林水産省資料参照)
現在のままアメリカが離脱し、かつ他の案もなければ、TPPは中止と考えても良いと思います。
2.TPPが中止になれば、日本の農業は安心なのか?
ここまで、TPPの今後について、説明してきました。
可能性としては、やはりTPPが中止になる可能性が高そうです。
これで一安心という農業関係者の方もいるのではないかと思います。
しかし、TPPが中止になったからといって、安心できるような状況ではないと、農ログは考えています。
このように考えるには、もちろん理由があります。
トランプ大統領は2国間で交渉を行うと言っている
実はトランプ大統領は、TPPからの離脱と共に、2国間で貿易の交渉を行うと言っています。
分かりやすく言うと、「日本とアメリカ、1対1で関税などの交渉をしましょう!」と言っているのです。
これは日本からすると、とても不利になる可能性が高いです。
トランプ大統領率いるアメリカ、これはもうジャイアンと言ってもいいでしょう。
ジャイアンと1対1で交渉して、自分に有利な条件を得るのは至難の業です。
今までは、TPPという多くの国の中での交渉だった為、いくらアメリカというジャイアンでも、そこまで無茶を押し通すことはできませんでした。
しかしこれが1対1の交渉となれば、大幅にアメリカに有利な条件となるでしょう。
農業という点で見ると、やはりTPP同様、関税は引き下げられる可能性が高いといえます。
もちろん、まだ日本とアメリカで交渉を行うとは決まっていません。
しかし、トランプ大統領が2国間交渉を行うと言っている以上、このような事になる可能性は十分あります。
このような理由から、TPPが無くなりそうだからと言って、安心できる状況ではない、と農ログは考えています。
3.過度に不安になる必要はない
ここまで、TPPの今後について、不安な部分を主に説明してきました。
しかし(安心できる状況ではありませんが)、前回の記事でも述べたように、農家さんは過度に不安になる必要は無いと思います。
下記の2点を考えれば、日本の農業はTPPが始まっても十分戦っていけると思います。
- ほとんどの農産物は既に関税が低い
- 日本産の農産物は安全・高品質
品質の良いものを作り、それを活かして販売していくことが、今までよりも大切になってくるでしょう。
4.まとめ
TPPの今後と、農業への影響を簡単にまとめます。
アメリカが離脱したTPPの今後については、下記の3つのパターンが考えられます。
- アメリカが復帰して、TPPが始まる
- アメリカ以外の国だけでTPPを始める
- TPPが中止になる
また、仮にTPPが中止になったとしても、アメリカとの個別交渉になる可能性があります。
そうなった場合は、TPPより更に不利な条件を押し付けられる事も考えられます。
農業への影響としては、TPPがどう決着しても、関税引き下げの可能性はあると考えておく方が良いでしょう。
とはいえ、日本の農業は下記のような強みがあります。
- ほとんどの農産物は既に関税が低い
- 日本産の農産物は安全・高品質
これらの強みを活かし、品質の良いものを作り、販売していけば、TPPがどうあれ、日本の農業は十分戦っていけると思います。