「野菜をせっかく作ったのに、動物に食べられた!」
「毎年、畑を荒らされて困る!」
こういった鳥獣被害を受けた農家さんの声をよく聞きます。
一生懸命つくった農産物を食べられたら、本当にくやしいと思います。
また、収穫がへって生活にもかかわってくるから大変です。
農産物のネット販売からは少し内容が外れますが、本当に多くの農家さんから鳥獣被害を聞くので、少しでも助けになればと思い、農ログが鳥獣害対策について調べてみました。
今回は、調べた鳥獣被害の現状から対策方法までを、まとめて紹介します。
鳥獣害対策を考えている農家さんの参考になればと思います。
鳥獣害の現状把握
鳥獣害と一言でいっても、何種類もの動物がいますし、被害の状況も様々です。
まずは、鳥獣による農作物の被害について、全体像をつかんでおきましょう。
被害面積の推移
下記のグラフは、獣類による被害を受けた農地面積(全国)の推移です。
だいたい6万~9万ヘクタールで推移していますね。大きな増加傾向はみられません。
鳥獣による農作物の被害は、年々、深刻化しているイメージがあるのでちょっと意外です。
ただ、日本の耕地面積はどんどん減っている状況ですから、被害を受けた面積の割合は増加していると言えます。
それに、獣害対策を行い、被害が減っている地域もあれば、反対に鳥獣害が深刻化している地域もあるわけです。
いずれにせよ、データからは、まだまだ多くの地域が鳥獣害に悩まされていることが分かります。
動物ごとの被害の大きさ
実際、どの動物による被害が多いのでしょうか?
下記のグラフは、動物ごとの被害額を示しています。
これをみると、「シカ」「イノシシ」「カラス」「サル」で、全体の8割を占めていますね。
やはり田舎周辺でよくみかける動物が多いようです。また、イノシシ、シカは体重が大きく、一頭が食べる量が多いという理由もあるでしょう。
他にも被害をおよぼす動物としては、
- ハクビシン
- アライグマ
- クマ
- タヌキ
- アナグマ
などなど、たくさんの種類がいます。
ハクビシンやアナグマは木登りが得意なので、木になった果物も被害を受けてしまいます。
それぞれの動物にあった適切な対策を行う必要があります。
動物が田畑を食い荒らす理由
そもそも、野生動物が人里の作物を食べにやってくる理由はなぜでしょう?
答えは、人の栽培した野菜・果物が、野生動物にとってすごく魅力的だからです。
山の中で暮らす動物は、ドングリや昆虫、ミミズなど、常にエサを探しまわっています。冬場はエサが少なくなり、餓死する動物もでてきます。
そんな厳しい環境で生きる野生動物にとって、人里の田畑はどう見えるでしょうか?
おいしくて栄養価の高い作物が、一か所にまとまってあります。しかも、冬場でもたくさんの作物が栽培されています。
これは野生動物にとって、たいへん魅力的なエサ場ですね。
無防備な田畑は、どうしても狙われてしまいます。
鳥獣による被害が増加したのはなぜ?
一昔まえに比べると、野生動物の人里への出没や、農作物被害が増えた地域もあります。
その原因は専門家によって意見が異なるのですが、よく言われる理由を挙げてみます。
理由1.地球温暖化
温暖化によって積雪量がへり、動物たちは冬でも生き延びやすくなった。
それにより、個体数が増え、生息域が拡大し、農作物の鳥獣被害が増えた、という理由です。
理由2.猟師が減った
動物を獲る猟師が減り、生息数が増えたからという理由です。
実際のデータでも、猟師の数は減っており、シカやイノシシの個体数(推定)は増加しています。
理由3.集落の過疎化で、人里に侵入しやすくなった
集落に人気が無くなり、野生動物が近づきやすくなった。
また、耕作放棄地が増えたことで、動物が隠れるのに最適な茂みが増えたからという理由です。
・・・以上、代表的な理由を挙げてみました。
個人的な考えとしては、「動物が人を恐れなくなった」というのもあるのではないかと思います。
猟師が減ることで、自分が狙われたり、仲間が猟銃で撃たれた経験のあるイノシシも減ります。もし自分が食べられるかもしれないと思えば、そのような危険な人里には近づかないはずです。
社会環境の変化で動物が人間を恐がらなくなり、そこに生息数の増加も合わさって、鳥獣被害が深刻化していると考えます。
みなさんの意見はどうでしょうか?
鳥獣被害の正しい対策
それでは本題である「鳥獣害対策」の方法について紹介します。
今回の記事では、どの動物に対しても共通する、基本的な対策を説明します。
対策1.集落内のエサとなるものを減らす
動物たちが人里で食べるのは、育てた野菜や果物だけではありません。
以下のようなものも動物にとっては、ごちそうです。
- 収穫後の残渣
- 稲の二番穂
- 地面に落ちた果実
- 手入れをせず自然に実をつけた「カキ」「びわ」「くり」
これらは人にとっては利用価値が低いので、目の前で動物に食べられても、つい放ってしまいがちです。
しかし、これでは人里でエサを食べることに慣れてしまい、野菜や果物の被害が増えることに・・・
収穫時期でなくても、動物のエサとなるものは、なるべく無くすようにしましょう。
対策2.動物のかくれ場所を減らす
山との境界部で木の密集したところや、耕作放棄され草がおいしげった茂みは、動物にとって最高のかくれ場所です。
昼間、茂みのなかに潜んでいれば、外からは見えないし、逆に中からは人の様子を観察できます。
いざ追われたときも、あちこちに茂みがあれば逃げやすいので、動物にとっては安心。
なので、不要な雑木や茂みは切ってしまい、集落全体の見通しをよくしましょう。
動物の近づきにくい環境をつくることが、被害の軽減につながります。
対策3.地域一体となって行う
鳥獣害対策は地域が一体となって行わなければ、効果がありません。
良くない例として、ある人が自分の畑に入ってきた動物に気づき、となりの畑まで追い払って、そこで止めてしまう。
しばらくして、となりの畑の人がそれに気づき、とりあえず自分の畑から追い出して終わる・・・
これでは意味がありません。
動物に気づいたら、周りのみんなで協力しあって、集落の外まで追い払わなければダメなのです。
対策4.柵で侵入を防ぐ
柵を設置して動物の侵入を防ぐのも効果的です。
田畑を一枚ずつ囲うやり方や、広いエリアをぐるっと囲うやり方があります。
「金網柵」「ネット」「トタン板」など、侵入する動物に合わせて選びましょう。
「電気柵」にするのも効果が高いです。
また、柵は設置したあとも、周りの草刈りをしたり、破れた部分の補修をしたりと、管理が必要になります。
そのあたりも考慮して設置場所を決めましょう。
柵の設置については「正しい獣害対策~防護柵を設置してイノシシの被害を防ごう~」で詳細に解説しています。ぜひ読んでみて下さい。
対策5.動物を捕獲する
捕獲用の檻(おり)をつかって動物を捕まえる方法もあります。
山奥に仕掛けてやみくもに捕獲するより、田畑を頻繁にあらす個体を捕獲するほうが効果的です。
ただし、捕獲だけに頼っては、なかなか被害は減りません。
まずは野生動物を集落に近づけない対策をしっかりと行い、それでもしつこく侵入してくる動物がいる場合は、捕獲を検討しましょう。
動物を捕獲するには2つの手続きが必要です。
- 狩猟免許の取得
- 役所への申請
なので捕獲を考える場合、まずは役場に相談しましょう。
まとめ
これらの対策は一つだけ実行しても大きな効果はありません。
対策を総合的に行って初めて被害を減らすことができます。
とくに大切なのは、地域が一体となって行動することです。
まずは少人数でもいいので、お互い協力する仲間をつくって対策を始めてみましょう。
今回は、農産物のネット販売とは少し違った、鳥獣害対策について紹介しましたが、どうでしたか?
私達が調べた内容が、少しでも農家さんの役に立てば幸いです。